時間には「幸福の時間」、「投資の時間」、「役割の時間」、「浪費の悲観」の4つの時間があり、
「幸福の時間」を増やすことであり、それを時間磨きと呼ぶと、
柿内尚文さんは著書「このプリン、いま食べるか?ガマンするか?」で言っています。
だれもが「幸福の時間」を増やしたい。
しかし「幸福の時間」の幸福とは何なのでしょうか?
幸福とは何か、納得した上で幸福の時間を増やしたいと思います。
そのために、いちど真面目に、幸福とはなんなのか考えてみたいのです。
今回、幸福学の第一人者の前野隆司さんの
「幸せのメカニズム 実践・幸福学入門」を参考にして、
幸福とは何かを考えてみたいと思います。
みなさまの幸福のために少しでも役に立てれば嬉しいです。
うれしい楽しいHappy
うれしい、楽しいといった時は幸せな気分です。
英語で言えばHappy。
この種の幸福は一時的、刹那的な気分です。
好きな映画や音楽を鑑賞したり、演劇やコンサートを見に行ったりして楽しい気分。
応援しているスポーツ選手やチームが好成績を残してうれしい。
そんな楽しみの予定があると、
朝起きた時、うれしくなって、良いスタートが切れるでしょう。
うれしい楽しい予定あると、生活のハリがでてきて、幸福の時間が増えます。
しかし、楽しい出来事が終わってしまうと、
楽しみにしている予定がないもとの日常に戻ってしまいます。
うれしい楽しい時間は、いつまでも続くわけではありません。
すると、そのような時間を繰り返し、
何度も繰り返すと慣れてきて、
より強い感動や強い刺激を求めることになり、
エスカレートしてしまうこともあります。
お酒やギャンブルなどでもHappyな気分が得られるかもしれませんが、
それは目指すべき幸福とは違うものと考えています。
長期的な幸福、Well-Being
嬉しい、楽しい幸福とは違い、
長期的な人生の幸福という状態があります。
それをWell-Beingと呼ぶことにします。
”well-being”は、1946年世界保健機関(WHO)で使われた言葉で
肉体的、精神的に健康で、社会的にも良好な状態のことです。
社会的な良い状態というのは、家族、友人、職場での人間関係が良好と考えます。
SDGsの17の目標の一つに
”Good health and well-being”「すべての人々に健康と福祉を」があり
「うれしい楽しいHappy」とは違った幸福だと考えられます。
長期的な心の状態には、
徳を身につけて社会に貢献する幸福と、
平和な世の中で健康でいられることに感謝する幸福の
二つの方向性があると考えています。
技術を身につけて、世の中に貢献する幸福
技術を身につけ、そのレベルを上げて、
世の中に役に立つことができたと実感できることは幸福です。
アリストテレスは、徳(アレテー、卓越性)を身につけ、
その卓越性を活かした仕事をすることが幸福だと考えました。
自分の得意なことを活かして、技術を身につけたいと考え、
目的をもっていることは幸福の一つの要因になりますが、
目的をのための努力は、つらいことも多いかもしれません。
どんな技術を身につけて、仕事にするか、
選ぶことは難しいものです。
学校での成績が良かった科目があって、
その科目を勉強するのが好きなならば、
それを極めることが目指す目標かもしれません。
自分が好きで得意なことであっても、
世の中には、その分野で得意な人はたくさんいて、
得意なはずだったのに劣等感を感じて
がっかりすることもあるかもしれません。
それでも努力を続けていき、
誰かに貢献できるほどのレベルアップできたら、
ある日、社会から感謝され、長期的に幸せになることがあります。
このような幸福は、歳をとって人生を振り返った時に、
これで良かったと思えるようなもので、
長い時間、安定して幸福感を得られるようなことです。
足るを知ることによる幸福
もう一つのWell-Beingは、「足るを知る幸福」です。
今できることを行い、今起こっていることを感じ、
戦争も飢饉もない平和な世の中で、
不幸ではない状態を感謝できることは幸福です。
美しい朝焼けや、遠くの山や海、きれいな雲をみたり、
ゆっくりと呼吸して、全身の力を抜いて、
風が吹いて草木が揺れる音や、鳥や虫の声を聞き、
頬にあたる風を感じていると穏やかな気持ちになります。
余計なことを考えず、いま感じられることを、ただ感じる。
変えることができない過去を後悔したりしない。
まだ起こってもいない未来に、過剰な不安を感じたりしない。
このような心の状態を維持できることがWell-Beingだと考えられます。
幸福の研究、幸福学
前野先生は、哲学的な幸福論ではなく、
データに基づく幸福についての研究を行いました。
その研究では、幸福度と、考えられる要因のアンケートをとり、
そのデータを整理することで、幸福とは何かを研究しました。
幸福になるための要因を数学的な手法を使って分析し、
幸福のメカニズム、幸福になるための方法を整理しました。
客観的幸福度、国連の世界幸福度ランキング
幸福度は、客観的な幸福度と主観的な幸福度の測定方法があります。
客観的幸福度は、国連の世界幸福度ランキングが有名です。
国別や地域別の幸福度を比較するときによく使われます。
以下の6項目など調査したものです。
(1)GDP、(2)平均寿命、(3)他人への寛容さ(例:ボランティア活動や募金の割合)、
(4)社会的支援(例:周囲のサポート)、(5)人生の自由度(例:人生の選択の自由)、
(6)国への信頼度(例:政治的な腐敗の少なさ)
https://worldinvest.jp/worldhappinessranking/
2025年3月21日に発表された世界幸福度ランキングでは1位はフィンランドで8年連続、
日本は55位で、前年の51位から下がってきています。
https://www.bbc.com/japanese/articles/cpq28dzx7j3o
日本はG7の中では最下位、
OECD36カ国(いわゆる先進国クラブ)の中でも例年、したのほうです。
一見、あまり幸福ではないような結果となります。
https://data.wingarc.com/objective-happiness-20654/2
主観的幸福度のランキング
アメリカのコンサルティング会社ギャラップ・インターナショナル社とWINという組織が
共同で行なっている主観的幸福度調査で、
「とても幸福」から「とても不幸」の5段階でアンケートを取って
幸福に感じている人の割合と不幸に感じている人の割合の差を、幸福度としています。
しばしば「純粋幸福度」と呼ばれます。
客観的幸福度は、調査者が考えた幸福の要因のうち
客観的に測定可能な項目を調査するのですが、
幸福というのは、もともと主観的な気分や心の状態だと考えれば、
主観的幸福度は、直接幸福度を測る方法だと考えられます。
国別での幸福度調査の結果で
例年、幸福度の上位に上がってくるのはフィジーです。
国連の世界幸福度ランキングではフィジーの国名はみられません。
日本は55カ国中20位前後(2018年調査で18位)でした。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/happy-country-fiji_jp_5c5b750be4b0faa1cb67c22f
フィジーの人たちは、
細かいことは気にせず、収入がなくてもなんとかなると考える人が多く、
フレンドリーな性格で出会った人とすぐ仲良くなり、いろいろなものを共有するそうです。
これらの国民の気質や行動習慣が幸福感を得るために必要なのかもしれません。
一方、日本の主観的幸福度が低い理由は、
日本人は高収入を目指しているからかもしれません。
高収入や財産は、幸福になるための要因ではないのかもしれません。
次の記事では、幸福の要因を統計的手法をつかって分析した結果から、
私たちがどのように生きていけば良いのかを考えてみたいと思います。
幸福に影響する要因の分析
何かの結果に影響する事柄を要因と呼びます。
性別は幸福に影響するか?
具体的な要因は、次のようなものが考えられます。
年齢、性別、健康状態、性格・気質、自由時間、睡眠時間、
家族(既婚・未婚、子供)、友人、社会とのつながり、
収入、雇用、教育履歴、勉強しているか、将来の目標、
趣味、文化、政治、宗教、など。
この要因は、過去の幸福に関する多くの研究者の考えが元になっており、
48種類あるそうです。
幸福の要因がそんなにたくさんあると把握するのが難しい。
だから、数多くの要因を、いくつかの因子に分解しよう。
その方法の一つに、数学的な分析方法で多変量解析で「因子分析」というものがあります。
因子分析とはなにか。直感的な言葉で表現するならば、
数多くある一つ一つの要因は、いくつかの因子の組み合わせでできており、
そのいくつかの因子と、要因の関係を数学的に明らかにしよう。
そして、そのいくつかの因子は何を意味するのか、要因に共通なことを考える。
これが、私なりに理解した前野先生の、幸福を理解するための方法です。
幸福に影響する事柄を分析する
幸福になるための要因と主観的幸福度について、アンケートでデータを集めて、
どのような要因が幸福に影響するのか、
どのような因子があるのかを分析するすることで、
幸福になる方法を明らかにしていこう、というのが、
前野先生の研究のシナリオです。
まず、代表的な要因についての分析結果の例を見てみます。
要因の例1:収入
収入は高いほど幸福かという視点で、
収入と主観的幸福度のアンケートの分析結果は、どのようになっているのでしょうか?
収入が多いほど幸福に感じる人が多いという傾向が予測されます。
結果は、お金はあった方が幸せという傾向はありますが、
その傾向は、年収がある程度以上になると薄くなっていき、
つまり年収が高くなっても幸福度はあまり上がらなくなります。
その年収が高くなっても幸福度が高くならなくなる値は、
約800万円程度だったそうです。その値は物価の変動によっても変わると考えられます。
年収が高くなると、仕事の時間が増えてリフレッシュする時間がなくなったり、
ストレスが高くなることなどが、800万円以上で幸福度増加傾向が減ってくる原因かもしれません。
要因の例2:自由時間
自由に使える時間と幸福度の関係はどうでしょうか?
子供の頃、長い夏休みになると、うれしくなったひとは多いと思います。
また、自由時間がかなり短いと幸福ではないと考えられます。
実際に分析すると、自由時間が7時間未満と13時間以上を比較すると、
13時間以上の場合、幸福度が下がってくるという傾向が見られるそうです。
一日の時間は睡眠時間を7時間、朝、支度をする時間や寝る前の時間を1時間と考えると、
起きて活動する時間は16時間程度です。そのうち自由時間が13時間というのは、
一日中、やることがないということかもしれません。
三大幸福論では、暇なことは不幸、仕事があって忙しくしている方が幸福、
と言われていることと一致します。
また、ある報告では、自由時間は一日3時間程度(2時間から5時間)が適当というレポートもあります。

仕事などの役割の時間を持ちながら、適度な自由時間をもち、
自由時間で、日々のうれしくなる楽しみの幸福の時間を持つことは、
幸福になるためのコツかもしれません。
まとめ
いったん、まとめます。
(1)一時的な幸福:うれしい、楽しい、Happyの感情は一時的な幸福
(2)長期的な幸福1:技術を身につけて世の中に貢献することによる幸福(Well-Being)があります。
(3)長期的な幸福2:足るを知ることによる幸福(Well-Being)があります。
(4)国連の世界幸福度ランキング(客観的幸福度)
幸福に寄与すると考えられる収入、寿命、寛容さ、自由さなどの
客観的な数値を調べて客観的幸福度と定義してランキングにしたもの。
上位は北欧。日本は先進国中下位であまり幸福ではないという結果です。
(5)民間企業調査の主観的幸福度のランキング
幸福かどうかを直接尋ねるアンケート結果。
一位はフィジー。
その原因は寛容で楽観的、友好的で、共有する文化が根付いているためと考えられる。
現在の日本は、調査国55カ国中、20位前後。
世界の中では高収入なほうで健康なのに満足していない。
さらに高収入を目指している。
(6)収入が幸福度に影響するのは限定的
年収800万円程度までは、収入が高いほど幸福度は高い。
年収800万円を超えると、収入が増えても幸福度は上がらない。
(7)自由時間はほどほどが幸福
一日の自由時間は3時間程度が最も幸福
一日のほとんどが自由時間の人は、幸福ではない。
幸福なのかどうか、その要因は何なのかを、統計的に調査してに分析することは、
幸福とは何かを理解する科学的な根拠になりそうです。
次の記事で、Well-Being的な長期的幸福の要因を分析した結果を紹介し、
幸福になるための方法を考えていきたいと思います。
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