あなたは、幸福な人生を送りたいと思ったことはありませんか? でも、そもそも「幸せ」とは何なのでしょうか。どんな状態になれば、「幸福だ」と感じられるのでしょうか? 忙しい日々の中で、じっくり考える機会は意外と少ないかもしれません。
本記事では、世界三大幸福論の一つであるヒルティの『幸福論』を紐解き、より充実した人生を築くためのヒントを探ります。
勉強したり仕事をしたりしている時間も、少し考え方を変え、仕事や勉強自体をると、幸福な時間だと思えるようになります。
そのために、世界三大幸福論とよばれる有名な幸福論を参考にしてみたいと思います。
みなさまの幸福のために少しでも役に立てれば嬉しいです。
三大幸福論とは?
「三大幸福論」と呼ばれる幸福論があります。著者は、生誕順に以下の三人です。
- カール・ヒルティ(1833〜1909)
- アラン(1868〜1925)
- バートランド・ラッセル(1872〜1970)
それぞれの哲学者は異なる視点から幸福を論じています。
- アランは、心の中から湧いてくるネガティブな感情「情念」を振り払い、幸福になる努力をし続けることが幸福につながると説きました。「幸せだから笑うのではない。笑うから幸せになるのだ」という言葉は有名です。
- ラッセルは、不幸の原因を分析し、それを避けることで幸福を得られると考えました。仕事・趣味・広い視野を持つことが幸福への鍵だと説いています。
では、ヒルティは幸福についてどのように考えていたのか、みていきましょう。
ヒルティの幸福論
ヒルティは1833年、スイスに生まれました。敬虔なクリスチャンとして宗教教育を受けるとともに、文学、法律学、哲学、歴史を幅広く学びました。政治学に関する著作をきっかけに、ベルン大学の教授となり、国際法などの講義を担当しました。
1891年、58歳のときに執筆した『幸福論』は、幸福とは何かを抽象的に論じるのではなく、幸福を得るための実践的な「コツ」を示した書として知られています。さらに、この書は膨大なページ数を誇り、その内容の豊かさと奥深さが話題となっています。
ヒルティは『幸福論』の中で、幸福を得るためには 働くこと、人々を愛すること、人格を磨くこと が重要であると説きました。また、不幸は幸福になるための糧であるという考え方も示しました。
本記事では、ヒルティの幸福論の考え方と具体的な教えについて紹介していきます。
出典:幸福論1 カールヒルティ著草間平作翻訳、大和邦太郎翻訳
仕事を生きがいにし、幸福を感じる
人は、自分が世の中に必要とされていないと感じると、強い孤独感や虚しさを覚えるものです。そうした状態が続くと、自己の価値を見失い、無力感に囚われることもあります。しかし、自分には何ができるのかを考え、それを実際に行動へと移すことで、人生に目的と充実感を見出すことができます。その手段の一つが「仕事」です。
仕事とは単なる生計を立てる手段ではなく、自分の能力を社会に役立てる方法でもあります。働くことで誰かの役に立ち、自分の存在が意味を持つことを実感できるのです。成果を積み重ねることで、自信を得ることができ、努力の過程そのものに喜びを感じることができます。
また、仕事を通じて人との関わりが生まれ、新たな学びや成長の機会が得られます。責任を持って取り組むことで達成感を感じ、挑戦を重ねることで自分自身を高めていくことができます。その積み重ねが、人生における「生きがい」となり、幸福へとつながっていくのです。
大切なのは、自分が何のために働いているのかを意識すること。仕事の中に意味を見出すことができれば、日々の充実度が大きく変わります。そうして「働くこと」そのものが、生きがいとなり、幸福の実感へとつながっていくのではないでしょうか。
習慣化して幸福を手にいれる
「自分の得意なことを見つけ、その仕事をしたい。」 しかし、人は時に怠惰になり、たとえ得意なことでも仕事を始めるのに苦労することがあります。そんなとき、怠惰な気持ちを切り替え、仕事をスムーズに始めるためのコツを、ヒルティは教えてくれています。
ヒルティの方法はシンプルです。 まず、仕事を始める最初の一歩を、できる限り簡単なものにする。これにより、心理的な負担が減り、行動に移しやすくなります。 次に、この簡単な一歩を習慣化し、ルーチンに組み込む。習慣として根付けば、仕事を始めるハードルは次第に低くなっていきます。
仕事において最も難しいのは「始めること」です。しかし、一度始めてしまえば、その流れに乗ることができ、自然と継続できるようになります。つまり、習慣化とルーチン化こそが、怠惰な自分を変え、勤勉な習慣を築く鍵となるのです。
習慣化の具体例:スムーズに仕事や勉強を始めるために
仕事や勉強を無理なく始めるには、習慣化が鍵となります。怠惰に流されず、スムーズに行動できるようにするため、以下のような習慣を取り入れてみました。
- 冬の朝、寒くてベッドから出られないなら → 事前に寝室を暖めておく。
- 目が覚めたらすぐ動けないなら → ベッドの中でストレッチや軽い筋トレを習慣化し、体を目覚めさせる。
- 朝の活力を高めるために → 起きたら水を飲み、鏡の前で顔の筋肉をほぐす運動をする。
- 楽しみを準備しておく → 寝る前にコーヒーや紅茶の準備をし、お気に入りのお菓子を用意しておくことで、朝起きたときの小さな楽しみを作る。
- 朝日を浴びる → 日の出の時間を調べ、その時間を確保して朝日を浴びる習慣をつける。雨の日は雨音を聴いて心を整えるのも良い。
- 仕事や勉強をスムーズに始めるために → 寝る前に仕事や勉強の準備を済ませておき、朝のスタートを楽にする。
- 継続を記録する → 毎日の日記や手帳にチェックを入れ、習慣化の達成感を味わう。続けられた自分を褒め、できなかった日も理由を記録することで、次の継続につなげる。
習慣化こそ幸福の鍵
日々の充実感や幸福感は、一朝一夕で得られるものではなく、 積み重ねた習慣 の中にこそ宿ります。些細な習慣の積み重ねが、怠惰な気持ちに流されず、行動を継続する力となり、結果として人生を前向きに動かしていくのです。
習慣化が進めば、仕事や学びを「やらなければならないこと」ではなく、「自然と取り組めること」に変わっていきます。最初は意識して行う必要があったことも、続けるうちに抵抗なくこなせるようになります。これにより、努力の継続が苦痛ではなくなり、自分の成長を実感しながら毎日を過ごせるようになります。
また、習慣化は「自己肯定感」を育てる力も持っています。小さな積み重ねでも、それを毎日続けることで「できた」という達成感が生まれ、自分自身を認めることができるようになります。手帳や日記に記録を残し、継続できたことを振り返ることで、自分の歩みを確かめられるのも習慣化の魅力です。
人生をより充実させ、幸福を感じるために、まずは 一つの小さな習慣 から始めてみるのが良いでしょう。その積み重ねが、やがて大きな変化をもたらすのです。
仕事に疲れたとき、頭を休める方法
ヒルティは、一つの仕事に疲れたときは、その仕事を一旦中断し、頭を休めることが必要だと説いています。ただ休むのではなく、違う種類の仕事に切り替えることで、気分をリフレッシュできるとも述べています。
例えば、仕事の合間に、机の周りを片付けることで環境を整えたり、予定を確認することで次のタスクを把握したりするのも効果的です。また、業務レポートを書いたり、相談したいことを上司や先輩に相談したりすることで、頭を休めつつ、仕事の進捗を整理できます。さらに、少しの時間だけ仕事に関連した学習をすることで、気持ちを切り替えつつ生産性を維持できます。
このように、仕事の種類を変えながら頭を休めることで、集中力を取り戻し、作業の効率を上げることができます。ヒルティ流の「頭の休め方」、ぜひ試してみてください。
教養を得た人の自然なしぐさ(長い人生で少しづつ近づけば良い)
ヒルティは、教養を得た人のしぐさの特徴として、慎み深さ、穏やかさ、勤勉さ、そして何事もやりすぎない姿勢 を挙げています。また、読書を通じた探究心と、勤勉な姿勢 も重要な要素だと説いています。
しかし、こうしたしぐさを若い頃から自然に身につけるのは簡単ではありません。若い頃は無邪気で情熱的に行動し、その過程で得た知識や経験を生かして成長していくものです。そして歳を重ねるにつれ、自らの人生を振り返りながら、周囲の人々のことを考え、自分の知識や経験を他者の役に立てる努力をすること が重要になっていきます。
人生の各ステージで学びを深め、得た知識や経験に感謝しながら、徐々に教養ある自然なしぐさを身につけていけるようになりたいものです。日々、穏やかな振る舞いと勤勉な姿勢 を持って行動していきたいと考えています。
慎み深い行動の大切さ
ヒルティの慎み深い生き方から思い出すのは、「日々の慎み深い生活が幸福につながる」という考え方です。
慎み深い行動について、私自身の経験を振り返ると、「何のイベントもない日常では贅沢を控える」ということが大切だと感じます。過去に、何気ない休日に外食で贅沢をしてしまい、その結果、思わぬ失敗を経験しました。そのような生活を続けると、子供は「休日のたびに外食をしたい」と言い始めます。もしその要求に毎回応じていたら、家族の誕生日や特別な日のお祝いのありがたみが薄れ、やがて子供たちの喜びが失われてしまうのです。
だからこそ、日常では健康に気を配り、節約しながら慎み深い生活を心がけることが大切 なのだと思います。特別な日は慎重に選び、本当に意味のある日こそ贅沢を楽しむ機会とする。このような節度ある暮らしを実践することで、特別な日の価値がより際立ち、心からその瞬間を楽しむことができるのではないでしょうか。
不幸は幸福になるための糧
ヒルティは、苦しみに出会ったとき、それを乗り越えることができる機会に恵まれたことに感謝し、今後その苦しみがどのように役立つのかを考えることで、幸福へとつなげることができると説いています。人生は「あざなえる縄」のようなものであり、苦あれば楽あり。苦しみを乗り越えた先には、それまで以上の幸福が待っているのだと思います。
苦しみが幸福につながる瞬間
たとえば、冬は寒く、夏は暑い。風の強い日もあれば、雨や雪の日もあります。こうした厳しい環境の中では、雨風や日照りをしのげる場所を確保していなければ、過酷な状況となってしまいます。しかし、その経験があるからこそ、暑さ寒さをしのげる環境の大切さを知り、それに感謝できるようになります。こうして、困難を乗り越えたからこそ得られる幸福があるのです。
また、2023年1月、NHK総合テレビの「家族に乾杯」と「ブラタモリ」のコラボ回で、鶴瓶さんが江ノ島岩屋(江ノ島神社)から帰ってきた青年と出会いました。その青年は、「最近いやなことが多かったので、厄払いに来た」と話しました。それに対して鶴瓶さんは、「いやなことは全部ボーナスポイントだと思えばええんや。ええことが起こる前触れ。そのうち絶対いいことがある」と励ましていました。この言葉を聞いたとき、不幸は幸福になるための糧である、という考え方を改めて思い出しました。
出典:ブラタモリ×鶴瓶の家族に乾杯 新春スペシャル 2023年1月1日放送
苦しみがあるからこそ、幸福の価値が高まる
もしかすると、人生には苦しみの方が多いのかもしれません。苦しみや不幸な出来事は、何もしなくても自然に降りかかってくるものです。しかし、幸福な出来事は、努力によって得ることはできても、めったに自然に訪れるものではありません。
それでも、不幸を経験することで、幸福な瞬間の価値をより深く感じることができます。困難を乗り越えた先にある小さな幸せが、より大きな感謝へと変わるのです。そして、「これからもっと良いことがあるはずだ」と信じて、前向きに努力し続けることで、より確かな幸福へとつながるのではないでしょうか。
利他的な心を持って行動する—人々を愛するということ
人生の各ステージに応じて、情熱を持って行動し、知恵を生かし、経験を積み重ねながら、知識や学びを次の世代へと伝えていく。そうした過程において、常に周囲の人々のことを考え、多くの人の役に立とうとする利他的な心 を持つことが、人々への愛の本質ではないでしょうか。
家族や友人、そして社会の中で、他者のために尽くすことを意識し、その行動が誰かの役に立つことで、愛の実践が形となります。そして、その愛が広がることで、自分自身の心も満たされ、幸福につながる のです。ヒルティは、こうした利他的な行動の積み重ねこそが、人との絆を深め、充実した人生を築く鍵であると説いています。
また、ヒルティは敬虔なクリスチャンとして、神への信仰を通じて苦難を乗り越えられる と考えていました。どんな困難の中でも、人々を愛し、他者を思いやることで、自分自身の心が強くなり、人生の試練にも揺らぐことなく進んでいけるのです。
そして、もし誰かから感謝されることがあったなら、それはあなた自身の幸福となります。利他的な行動は、単なる犠牲ではなく、他者を幸せにすることで、自分の心も満たしていくものなのです。
まとめ:ヒルティの幸福論から学ぶ幸福への道
ヒルティの幸福論に基づき、幸福になるための方法を整理すると、以下の五つの要素に集約されます。
- 仕事を生きがいにする。 充実した仕事に取り組むことで、人生に目的を持ち、幸福を感じる。
- 習慣化して幸福を手に入れる 良い習慣を身につけることで、努力が苦にならず、幸福へとつながる。仕事に疲れたと感じたら、別の仕事をして頭を休められる。
- 教養を得た人の自然なしぐさ 穏やかな振る舞いを心がけ、周囲に感謝を示すことで、より豊かな人間関係を築く。
- 不幸を幸福への糧とする 苦しみを乗り越えることで、それまで以上の幸福を味わえるようになる。
- 利他的な心を持って行動する 他者のために尽くし、感謝されるような行動を取ることで、自分自身の幸福も深まる。
これらの行動を実践できれば、今日一日を「幸福な日だった」と感じられるでしょう。
日々の出来事を振り返り、幸福を意識的に見つめ、しっかり味わう習慣を身につける ことが、より充実した人生につながるのではないでしょうか。
コメント